戦略的組織再編を行い、
当社グループならではの企業価値の最大化を目指す

 当社は創業以来、「SAVE the DIGITAL WORLD」をミッションに、ゲームソフトウェアのデバッグを出発点に、エンタープライズ分野での品質保証やサイバーセキュリティまで事業を拡大し、企業から一般ユーザーまで、安心してデジタル社会で暮らせるお手伝いをしてまいりました。

 昨今、生成AI等の新技術の普及が進むとともに、デジタルプラットフォームやコンテンツの多様化・複雑化・グローバル化が加速度的に進展するなど、当社グループを取り巻く事業環境が大きく変化しています。また、企業経営においても、高度な専門性と変化対応力、そして先見性が求められています。このような状況のもと、エンタープライズ事業においては、ソフトウェアの複雑化等を背景に、単なるテストの代行だけではなく、テスト専門企業ならではの知見を活かしたソリューションに対する需要が拡大しており、一方、エンターテインメント事業においては、ゲームタイトルのグローバル展開加速に伴う翻訳・マーケティングに関する需要が拡大するとともに、動画・漫画アプリといったエンターテインメントコンテンツの多様化に伴う新たなビジネスチャンスが生まれています。
 当社では、これらの変化を成長機会と捉え、両事業をさらに発展させ企業価値を最大化するためには、両事業を完全に分離し、それぞれの事業に特化した人材・技術・事業基盤を構築することが必要と判断し、2023年5月に、エンタープライズ事業の中核子会社である株式会社AGEST(以下、「AGEST」)の株式分配型スピンオフ及び上場(以下、「スピンオフ上場」)に向けた準備を開始することを決議いたしました。
 このスピンオフ上場準備を開始して以降、それぞれの事業が目指していく方向性がより明確になったことで、従来にはないスピード感で新たな成長に向けた取り組みを推進できたと考えております。例えばエンタープライズ事業においては、他の第三者検証では対応していないシフトレフト領域における新サービスを次々とローンチするとともに、AI活用に向けた取り組みを本格化するなど、“QA”及び“技術”に特化した事業運営をいたしました。また、これらの取り組みを推進することで最新技術を活用した“テック企業”としてのAGESTのブランドが浸透し、ハイスキルエンジニアの採用が着実に進むようになりました。一方、エンターテインメント事業においては、グローバル事業の強化を目的に、M&Aやアライアンスを積極化し、欧米言語に対する翻訳やゲームの音声収録等のサービスを強化するとともに、英語圏でのデバッグを行う合弁会社の設立やAIを活用したゲーム翻訳エンジンの開発等を進めるなど、安定成長フェーズから成長軌道への転換に向けた戦略投資を加速いたしました。
 2024年3月期の売上高は、これらの取り組みの成果もあり38,790百万円(前期比106.2%)と増収を達成したものの、利益面では、スピンオフ上場準備費用の増加や収益性が低下していた米国テスト子会社ののれんの減損の影響等により、営業利益は2,039百万円(前期比 68.0%)、親会社株主に帰属する当期純利益は176百万円(前期比 22.1%)と、残念ながら大幅減益となりました。このように短期的には非常に厳しい業績となり、株主の皆様にご心配をおかけし大変心苦しく思っておりますが、両事業の成長のモメンタムは継続しており、直近ではエンターテインメント事業においてグローバル案件が着実に増加するとともに、エンタープライズ事業も好況な市場環境のもと新規案件が増加しております。このため、次期の2025年3月期においては、両事業ともに増収増益基調へと転換し、連結業績としては、売上高44,100百万円(前期比113.7%)、営業利益3,100百万円(前期比152.0%)と過去最高の売上高・営業利益の更新を計画しております。
 また、当社では、エンターテインメント事業を行う“DHグループ”と、エンタープライズ事業を行う“AGESTグループ”それぞれに専念した経営を行うことを目的に、2024年4月1日よりマネジメント体制を変更いたしました。次期においては、当期以上にそれぞれの事業に特化した経営を行うことで、両事業の成長ポテンシャルの最大化に努めてまいります。

 株主の皆様におかれましては、当社の戦略的組織再編を通じたチャレンジにご期待いただき、引き続き変わらぬご支援をいただけますと幸いです。

2024年5月9日
代表取締役社長 CEO
筑紫 敏矢