両事業ともに増収・2桁増益を達成
スピンオフ上場を含めた新しいチャレンジにより、さらなる成長を目指す

当社は、2023年5月より連結子会社である株式会社AGESTの株式分配型スピンオフ及び上場(以下、「スピンオフ上場」)に向けた準備を行っております。当期は、これらの準備の一環として新しいマネジメント体制へと移行し、DHグループ事業、AGESTグループ事業それぞれ独立した2グループ経営を開始いたしました。この新たな体制になってから1年が経ち、当初我々が想定していたとおり、独立した経営を行うことにより、それぞれの専門性の追求や成長戦略に沿った迅速な経営判断ができるようになり、時代の変化に合わせたスピード経営が出来てきていると実感しております。
DHグループ事業では、基幹ビジネスであるゲームデバッグ事業が大型案件を受注するなど底堅く伸長した一方で、グローバルサービスのシェア拡大に向け、当期は大きな一歩を踏み出せた年だと考えています。例えば、欧州・中国・日本・韓国で開催された各国最大規模のゲームショウへの出展を積極化させることで、海外ゲームメーカーに対し“DIGITAL HEARTS”ブランドの知名度向上を図るとともに、需要が拡大している翻訳・LQAに対するソリューションのプロモーション強化を図ってまいりました。特に、当期新たに提供を開始した、独自のゲーム特化型AI翻訳エンジン”ella”を活用した翻訳サービスについては、トライアル案件含め既に70件以上受注するなどクライアントの皆様からも非常に高い関心を得ており、翻訳スピードと品質に対して高評価をいただいております。この”ella”は、一般的な機械翻訳とは異なり、ゲームの翻訳で必要不可欠なゲームの世界観やキャラクター性を活かした表現を可能とすることを最大の特徴としており、複数言語での世界同時発売が主流となっている現在のゲーム開発現場において、革新的なサービスになると自信を持って提供しています。また、既存事業のみならず、eSportsやWeb3、AIといった新規領域への投資を加速するなど、新たな成長領域に向けたチャレンジも積極化いたしました。
一方AGESTグループ事業では、IT人材不足やDX投資の加速を背景に増加する国内テストの需要増を追い風に、“テスト専門企業”としての技術力を追求してまいりました。具体的には、開発の上流工程から品質向上を支援する“シフトレフト”に対応した付加価値の高いソリューションの提供に努めるとともに、テスト自動化やテスト領域におけるAI活用を推進いたしました。特に、2025年1月にβ版をローンチした独自のAIテストツール”TFACT (ティファクト)”は、自動化等によりテスト工数を30%程度削減可能なことに加え、テストケース作成からテスト実行、結果分析、レポート作成、テストケース管理まですべてワンストップでAIがアシストするという、他社にはないユニークなツールであり、一部機能については現在特許も申請しております。
このように、それぞれの事業領域に特化した成長戦略を推進したことで、2025年3月期は両事業ともに増収・2桁増益を達成し、連結売上高は39,748百万円(前期比102.5%)、連結営業利益2,430百万円(前期比119.1%)となりました。当期純利益につきましても前期比で大幅増益を確保したものの、DHグループ事業で投資した企業の投資有価証券評価損を残念ながら計上することとなりました。ただ、これらの企業は従来にはない全く新しいビジネスモデルの構築にチャレンジしている非常に面白い企業であり、引き続き一緒に未来に向けた事業創造に挑戦していきたいと考えています。
次期につきましては、両事業ともに増収・増益基調を維持することで、連結売上高39,750百万円(前年比100.0%)、連結営業利益2,640百万円(前期比108.6%)を計画しております。売上高につきましては、当期選択と集中により整理したノンコア子会社の影響もあり、前年並みの売上高となっておりますが、本影響を除いた本業では前期比108.5%と2桁近い増収を計画しております。また、当期純利益につきましても、次期は当期計上した特別損失の反動等により、前期比263.7%の大幅増益を計画しております。これに伴い、株主還元につきましても、当期普通配当より2.0円増配し、23.0円の年間配当金を予定しております。
また、最後になりましたが、当社グループの最大の経営戦略であるスピンオフ上場についてですが、こちらはバックオフィス機能構築や社外取締役選任によるガバナンス強化等、独立した上場企業として求められる経営基盤の構築を着実に進めました。米国政府の政策等により、やや株式市場の動向が読みにくくなっている昨今ではありますが、最適なタイミングでのグロース市場への上場を引き続き目指してまいります。
株主の皆さまにおかれましては、今後も当社の新しいチャレンジにご期待いただき、引き続き変わらぬご支援をいただけますと幸いです。
2025年5月13日
代表取締役社長 CEO
筑紫 敏矢